eスポーツは今や「ただのゲーム」ではありません。プロ選手の登場や国際大会の盛り上がりにより、スポーツ・教育・ビジネス・心理学など、さまざまな分野から注目を集める存在になっています。
このような背景を受けて、大学や研究機関でもeスポーツを研究テーマとした論文が増加中。とはいえ、まだ新しい分野であるため、「どんなテーマで書けばいい?」「研究の切り口は?」と悩む人も多いのではないでしょうか。
本記事では、eスポーツに関する論文テーマ例や、研究の進め方、参考資料の探し方までを幅広く解説します。教育・心理・ビジネス・文化といった観点から、論文テーマを探している方や、eスポーツ研究に興味がある方はぜひ参考にしてください。
この記事のコンテンツ
eスポーツが論文テーマとして注目されている理由

ここ数年で、eスポーツは娯楽や競技という枠を超え、教育・医療・ビジネス・地域活性化など多様な分野での応用が進んでいます。
その流れの中で、eスポーツを学術的に捉えようとする動きが活発になり、論文テーマとしても急速に注目を集めています。
では、なぜeスポーツがここまで学術的価値を持つようになったのでしょうか?以下では、基本的な定義から現在の社会的な位置づけ、そして研究テーマとしての多様な可能性について詳しく見ていきましょう。
eスポーツとは?定義と現在の位置づけ
eスポーツ(eSports)とは、電子機器を用いた競技全般を指す言葉で、主にコンピューターゲームやビデオゲームを使って対戦する形式を意味します。
単なる「遊び」とは異なり、技術や戦略、反射神経、チームワークなどが要求される点で、スポーツとしての要素を持っています。
現在では、国内外で大規模な大会が開催され、賞金総額が数億円に達することもあるなど、プロスポーツの一分野としての地位を確立しつつあります。また、日本では文部科学省が「eスポーツの教育的価値」に注目しており、高校や大学におけるeスポーツ教育の導入も進んでいます。
なぜ今、大学や研究者がeスポーツに注目するのか
eスポーツは新興分野であるがゆえに、研究対象としての「未開拓さ」があり、そこに学術的な魅力があります。たとえば以下のような理由で、大学や研究機関での注目度が高まっています。
- 多角的に分析可能なテーマが豊富(心理学、教育学、経済学、社会学など)
- 若年層との接点が強く、現代社会とのつながりが深い
- データ収集や実験設計がしやすいデジタル競技である
- 国際的に研究が進んでおり、比較研究も可能
このように、eスポーツは「新しさ」と「学際性」を兼ね備えたテーマであり、今後の学術研究においても重要なフィールドになると考えられています。
研究テーマとしてのeスポーツの多様性
eスポーツが注目される背景には、その研究分野としての広がりも大きく影響しています。以下のように、1つの分野にとどまらず、複数の領域にまたがる研究が可能です。
- 教育分野:eスポーツを通じた協働学習、ICTリテラシーの育成、教育機関でのカリキュラム開発など
- 心理学・脳科学:集中力、判断力、ストレス耐性、ゲーム中の脳活動の計測と分析
- 社会学・文化人類学:ゲーム文化、ジェンダー、若者のアイデンティティ、地域コミュニティ形成
- ビジネス・経済学:eスポーツ産業の成長、スポンサーシップ、マーケティング戦略
- 医学・健康:長時間プレイによる身体・精神への影響、リハビリや高齢者支援への応用
このように、自分の専門領域×eスポーツという切り口でテーマ設定がしやすいのも、大きな魅力です。
eスポーツに関する論文テーマ例【ジャンル別】

eスポーツは単なる娯楽にとどまらず、教育、心理、社会、ビジネス、医療といったさまざまな分野で研究対象として注目を集めています。
以下では、それぞれのジャンルにおける論文テーマ例と、実際に行われている研究事例を紹介します。eスポーツの多面的な可能性を探るヒントになるはずです。
① 教育・学校現場での活用
eスポーツは教育現場において、ICT教育や情報モラルの教材として活用される流れが進んでいます。
研究例:教職志望の大学生を対象にした調査では、eスポーツの学校導入に対して賛否が分かれる結果となり、反対理由として「ゲーム依存」「視力への悪影響」といった懸念が挙げられました。
この研究は、教育現場でのeスポーツ活用が課題と可能性を同時に秘めていることを示しています。
② 心理・認知的な側面
eスポーツのプレイが、集中力や実行機能といった認知スキルの強化にどのような影響を与えるのか、多くの研究が行われています。
研究例:大学生のeスポーツ実施前後を比較した研究では、実行機能(判断・抑制・計画など)の向上が認められ、またプレイ中の集中度も高くなる傾向が示されました。
これは、eスポーツが認知機能を伸ばす手段としての可能性を秘めていることを示唆しています。
③ 社会・文化的視点
eスポーツは新しい「文化」として、社会的なつながりやコミュニケーションに与える影響も研究対象になっています。
研究例:オフラインでのeスポーツ対戦が、気分の改善や「絆ホルモン」と呼ばれるオキシトシンの分泌にポジティブな効果をもたらすことが明らかにされました。
この研究は、eスポーツが社会性や人間関係構築において新しい可能性を秘めていることを示しています。
④ ビジネス・産業分野での研究
eスポーツ市場の拡大とともに、広告、イベント、グッズ、メディア展開など、多くのビジネスモデルが誕生しています。
研究例:KPMGジャパンの報告では、eスポーツ市場の拡大に伴い、ゲームをプレイしない層も観戦を楽しむようになり、関連サービスにお金を使うことで新たな2次・3次ビジネスが生まれていると指摘されています。これにより、eスポーツは新たなビジネス創出の可能性を秘めているとされています。
参照:KPMG・新たなビジネス創出が期待されるeスポーツとは
⑤ 医療・健康の観点からのアプローチ
eスポーツを福祉や医療に応用する研究も進行中で、高齢者支援やメンタルケアなどへの導入が検討されています。
研究例:高齢者施設におけるeスポーツ導入による研究では、参加者のストレス軽減やコミュニケーションの活性化といった効果が報告されています。
これは、eスポーツが高齢者のQOL(生活の質)向上に貢献する可能性を秘めていることを裏付けています。
eスポーツ論文の書き方と進め方のポイント

eスポーツは新しい研究分野だけに、どうやって論文としてまとめていけばいいのか悩む人も多いかもしれません。
ここでは、テーマ選定からデータの探し方、仮説の立て方、そして結論の導き方まで、eスポーツに関する論文を書く際の基本的な流れとポイントをわかりやすく解説します。
ポイントとしては以下の4つが挙げられます。
- テーマ選定のコツ|独自性と先行研究のリサーチ
- 参考になるデータ・論文の探し方
- 仮説の立て方と分析方法の事例
- まとめ方と結論の導き方
それぞれ詳しく解説していきましょう。
テーマ選定のコツ|独自性と先行研究のリサーチ
eスポーツは多様な切り口で研究が可能な分野です。だからこそ、まずは「どの視点で掘り下げるか」を明確にしましょう。
たとえば、
- 教育×eスポーツ
- 高齢者福祉×eスポーツ
- ジェンダー×eスポーツ
など、自分が興味を持てるテーマと、社会的にも意義のあるテーマを掛け合わせて考えるのがおすすめです。
また、先行研究の調査(リサーチ)はとても重要です。
J-STAGEやCiNii、Google Scholarなどを使って、同じテーマでどのような研究が行われているかを調べましょう。先行研究を把握することで、自分の研究の独自性や意義が見えてきます。
参考になるデータ・論文の探し方
信頼性のあるデータを使うことで、論文の説得力はぐっと増します。以下のようなリソースが役立ちます:
- J-STAGE(科学技術振興機構):日本語の学術論文を無料で閲覧可能。eスポーツ関連の研究も多くあります。
- CiNii Articles:国立情報学研究所が提供する論文データベース。
- Google Scholar:英語論文も含めた世界中の論文検索が可能。
- 企業の調査レポート:KADOKAWA Game LinkageやKPMG、Newzooなどはeスポーツに関する市場データや動向を発表しています。
また、自治体や教育機関が発行しているレポートも視点のヒントになります。
仮説の立て方と分析方法の事例
仮説は「○○が△△に影響しているのではないか?」という問いを立てるところから始まります。
例えば:
- 「eスポーツは生徒のコミュニケーション能力にどんな影響を与えるか?」
- 「eスポーツの長時間プレイは認知機能にどう影響するか?」
上記の疑問を解決するための方法が「分析」です。
分析方法は、テーマに応じて選びましょう。
- アンケート調査(量的データ)
- インタビューや観察(質的データ)
- 文献分析、ケーススタディなど
たとえば、高校でのeスポーツ部活動について調べる場合は部員にアンケートを行い、活動前後の変化を見るなどが考えられます。
まとめ方と結論の導き方
論文の最後では、自分の研究を通じてどんな新しい知見が得られたのか、社会的にどんな意義があるのかを明確にまとめましょう。
構成のポイントは以下の通りです
- 研究結果の要約:調査や分析から導き出した事実を簡潔に。
- 考察:なぜその結果になったのか、他の研究と比べてどうかなどを深掘り。
- 今後の課題や展望:研究の限界や、次のステップにつながるヒントを示す。
読み手が「なるほど」と納得できるよう、できるだけ専門用語は避け、具体例を交えて説明するとよいでしょう。
参考になるeスポーツ関連の論文・サイト紹介

eスポーツに関する研究を進めるためには質の高い参考文献や信頼できるデータにアクセスすることが重要です。
ここでは、教育・スポーツ系、ビジネス系、心理・脳科学系の研究など、eスポーツに関連する各分野の論文や調査レポートを紹介します。これらのリソースを活用することで研究がより深みを増し、説得力を持つようになるはずです。
教育・スポーツ系の学術論文
eスポーツの教育的側面や、スポーツとしての価値を探る研究は、近年注目を集めています。以下のリンクから、教育やスポーツ関連の学術論文を簡単に探し、研究に役立てることができます。
- J-STAGE 教育学論文
J-STAGEは日本の学術論文が無料でアクセスできるプラットフォームです。eスポーツに関連する教育学の研究や、スポーツ心理学に関する論文も豊富に揃っています。特に日本の教育機関や学校現場でのeスポーツ活用に関する資料を多く見つけることができます。
- CiNii Articles
CiNiiは日本の論文データベースで、eスポーツをテーマにした教育や学校現場での活用に関する研究も豊富です。検索がしやすく、関連する記事を見つけるのに便利です。
ビジネス系の調査レポート
eスポーツのビジネス面に関する調査レポートは、業界の動向や市場規模を把握するうえで非常に重要です。ビジネス系の調査レポートでは、スポンサーシップ、メディア戦略、マーケティングなど、産業としての成長に関する具体的なデータが得られます。
- Newzoo
eスポーツ市場の成長や未来の予測に関するデータを提供するNewzooは、世界中のeスポーツ市場に関するレポートや調査結果を詳細に扱っています。企業やマーケティング担当者にも役立つ情報が多いので、ビジネス関連の論文には欠かせないリソースです。
- KPMGのeスポーツレポート
KPMGは、eスポーツ業界の発展や企業戦略に焦点を当てたレポートを定期的に発表しています。特に、スポンサーシップやメディア戦略に関する研究が充実しており、産業全体の動向を知るには最適なリソースです。
心理・脳科学系の研究事例
eスポーツが心理学や脳科学に与える影響に関する研究も進んでおり、プレイが認知機能や心理状態に与える影響を理解するための重要な情報源です。これらの研究を参考にすることで、eスポーツが個人や集団に及ぼす影響について深く掘り下げることができます。
- PubMed
PubMedは医学や生命科学の研究データベースで、eスポーツと認知機能や心理に関する研究が数多くあります。特に脳科学や心理学の観点からeスポーツにアプローチする論文が豊富に見つかります。
- ScienceDirect
ScienceDirectは、科学技術全般の研究記事が揃うプラットフォームで、eスポーツが心理学や認知科学に与える影響について詳しく研究した論文も多数あります。英語論文が多いため、世界的な視点からも研究できます。
- Frontiers in Psychology(心理学分野の学術誌)
Frontiers in Psychologyでは、eスポーツに関する心理学的な研究が掲載されています。プレイヤーの心理状態やストレス管理、チームプレイにおけるコミュニケーションの重要性について学ぶことができます。心理学的な視点でeスポーツを探求する際に有益な研究を提供しています。
日本語で読める公開論文まとめ
日本語での研究を進めるうえで、日本国内の研究論文を簡単に探せるプラットフォームは欠かせません。以下のリンクを活用すれば、日本語で読めるeスポーツに関する論文を素早く見つけることができます。
- J-STAGE
日本の学術論文を網羅するプラットフォーム。eスポーツに関連する学術論文を無料で閲覧でき、特に日本の教育や文化におけるeスポーツの影響に関する論文が多くあります。国内の研究者による発表も豊富です。
- CiNii Articles
日本語の学術論文を簡単に検索できるCiNiiは、国内のeスポーツに関連する研究論文を広範囲にカバーしています。検索機能が優れており、必要な論文を迅速に見つけられるのが特徴です。
まとめ|eスポーツは研究テーマとして無限の可能性がある
eスポーツは、教育、ビジネス、心理学、健康など、さまざまな分野で革新的な研究テーマとして注目されています。その多様性と急速な発展により、今後ますます研究の深掘りが進み、学問としての位置づけも確立されるでしょう。今回ご紹介した論文の書き方や研究テーマの選び方は、eスポーツに関心があるすべての人にとって重要なステップです。
質の高い論文を執筆するためには、信頼性のあるデータと論文を活用することが不可欠です。紹介した各種プラットフォームやリソースを活用し、独自の視点を持つ研究を進めることで、あなたの論文が一層価値のあるものとなるでしょう。
一方でeスポーツの研究はまだ始まったばかりです。その中で、eスポーツスクールが果たす役割は非常に重要です。実際にeスポーツを学び、実践的なスキルを身につけることが、研究の視野を広げる一助になります。あなたが目指す論文作成に必要な知識やスキルも、スクールでの学びを通じて深めることができます。
今すぐ始めるなら、eスポーツスクール「AFRAS(アフラス)」をおすすめします。
AFRASでは最新のゲーム技術から、eスポーツがビジネスや教育・心理学などとどのように関連しているかについての専門的なカリキュラムを提供しています。学んだことを基に、研究テーマを見つけ、実際の論文作成に役立てることができます。
eスポーツの分野はまだまだ未開拓の部分が多く、学問的にも非常に魅力的な領域なので、今後この分野で先駆者となるためには、まずは実践的な知識と技術を身につけることが大切です。AFRASでは学びをサポートし、eスポーツ業界で活躍できる人材を育成しています。
今すぐ、eスポーツの可能性を広げる第一歩を踏み出してみましょう!