eスポーツは、コンピューターゲームを用いたスキルや戦略を競うスポーツです。しかし、コンピューターゲームを用いることで、他のスポーツとは一線を画しているため「スポーツじゃない」と否定されることも珍しくありません。
この記事では、スポーツの定義をもとにeスポーツがスポーツとして認められるのかどうかや、eスポーツに関する論文についても解説します。
eスポーツはスポーツなのか?
eスポーツとはElectronic Sports(エレクトロニック・スポーツ)の略称で、コンピューターゲームを用いて勝敗を競う競技です。ビデオゲームだけでなく、モバイルゲームなどもジャンルに含まれており、世界中で人気を博しています。
性別や年齢による差がなく、オンラインで住んでいる場所にも関係なく参加できるeスポーツは他のスポーツに無い魅力があります。一方で、鍛え抜いた心身を用いて競う従来のスポーツとは異なる点から「eスポーツはスポーツじゃない」という意見があるのも事実です。
eスポーツでは知略、戦略、スキルを競い合うことから、多大な分析や自己研鑽が求められます。スポーツ選手が競技で勝利を掴むために心身を鍛えるのと同じように、eスポーツプレイヤーも勝利を掴むため日々練習を繰り返しています。
真摯にeスポーツに取り組む姿勢は既に娯楽の域を超えており、スポーツとして認められるのではないかというのがeスポーツ推進派の意見です。
スポーツの定義から見るeスポーツ
スポーツに関して、平成23年に定められたスポーツ基本法によって定義が定められています。続いては、スポーツの定義からみるeスポーツのスポーツ性について解説しましょう。
eスポーツの活動性について
eスポーツがスポーツじゃないと言われる最も大きな理由として活動性の有無が挙げられます。
”スポーツは、心身の健全な発達、健康及び体力の保持増進、精神的な充足感の獲得、自律心その他の精神の涵(かん)養等のために個人又は集団で行われる運動競技その他の身体活動”
スポーツ基本法では、スポーツには健康及び体力の保持増進などを目的とした身体活動であることが定義とされています。eスポーツにおいては、コントローラーを操作するための手先の技術等は求められるものの、これを「身体活動」と呼べるのかどうかは疑問が呈されることでしょう。
競技の一面だけを見ればeスポーツは身体活動を伴うスポーツとは言えないかもしれません。
しかし、スポーツカーなどでレースを行うモータースポーツは、車を操作する技術を競うスポーツとして認められています。車を運転することを身体活動とするのであれば、eスポーツも充分にスポーツとして認められるのではないか?という意見が少なくありません。
その他にも、マインドスポーツと呼ばれ世界中で親しまれるチェスやポーカー、囲碁など、知略だけで競うものもスポーツと呼ばれるのであれば、eスポーツだけが除外されるのには違和感を覚えるしょう。
eスポーツの影響力について
スポーツの定義として影響力も大きな要素のひとつです。
”スポーツは、次代を担う青少年の体力を向上させるとともに、他者を尊重しこれと協同する精神、公正さと規律を尊ぶ態度や克己心を培い、実践的な思考力や判断力を育む等人格の形成に大きな影響を及ぼすものである”
スポーツ選手に清廉潔白を求めるように、スポーツを通して模範となるような人間性を養うことも求められています。
eスポーツはビデオゲームを用いることから「ゲームばかりしていると引きこもりになる」「ゲームに影響されて暴力的な性格になる」などのイメージを持たれることが少なくありません。
しかし、実際はチームでeスポーツを行うために綿密なコミュニケーションをとったり、信頼関係を築いたりすることも欠かせません。プロeスポーツプレイヤーになれば、マネジメント役やコーチ役、アナリストなど、ソロプレイヤーでも多くの人との関わりが必要です。
さまざまな人と関わるなかで、思考力や判断力が養われ、他者を尊重する精神も育まれることでしょう。このような背景から、教育機関でもeスポーツをクラブ活動として認めるケースが増えています。
eスポーツの社会貢献について
”スポーツは、人と人との交流及び地域と地域との交流を促進し、地域の一体感や活力を醸成するものであり、人間関係の希薄化等の問題を抱える地域社会の再生に寄与するものである。”
スポーツには社会貢献も求められます。eスポーツは「若者のスポーツ」というイメージが強く、現状では社会的に広く受け入れられている訳ではありません。
しかし、性差や年齢差、住んでいる場所、身体能力の差などに影響を受けないスポーツである一面は、社会に貢献できる大きな可能性を秘めていると考えられるでしょう。
実際に愛知県では自治体が主催してeスポーツの体験会などを催し、地域の活性化に繋がっています。
eスポーツのスポーツ性に関する論文
eスポーツはスポーツじゃないのかという論議については各分野で活発に行われており、さまざまな論文も発表されています。
「eスポーツと既存スポーツの差異に関する一考察」の論文について
eスポーツ文化研究会が発表した「eスポーツと既存スポーツの差異に関する一考察」では以下の内容が発表されています。
- 元来スポーツは身体的技術を競うものと認識されている
- eスポーツにおいてもコントローラー操作技術や瞬発力などの身体的技術が必要とされる
- ゲームのメカニズムはプレイヤーが行う行為(技術)から発生する可能性の状態を規定とする仕組み
- 元来のスポーツにおいても、人間の身体能力や器具などから発生する可能性の状態を規定とするものがスポーツのメカニズムに当てはまる
これらの考えから、eスポーツはスポーツの分類に当てはまるものだと主張しています。
「eスポーツはスポーツなのか」の論文について
高知工科大学の経済・マネジメント学群 北濱竜也氏が発表した論文では以下の内容を提示しています。
- スポーツの語源はラテン語のDeportale(気晴らしする、楽しむという意味)
- 気晴らしをする、楽しむという点で見ればeスポーツはスポーツと言える
- スポーツのなかにはマインドスポーツもあり、必ずしも身体活動が求められている訳ではない
- スポーツの定義は組織化された身体的な競争である
上記の結果を踏まえて、eスポーツはスポーツであると考察しているものの、参考文献が少ないため十分な検証ができているとは言い難いとのコメントが残されています。
海外ではeスポーツはどのように扱われている?
日本では、eスポーツはスポーツじゃないと言われることが多いですが、海外ではどのような扱いをされているのでしょうか。
アメリカのeスポーツ
eスポーツ人口が最も多いと言われるアメリカでは、eスポーツが広まる前からプロゲーマーと呼ばれる人がいました。ゲームの大会なども盛んに行われており、現代でもeスポーツはスポーツとして認められています。
大学でもeスポーツを専攻して学ぶことが可能で、eスポーツを学ぶための奨学金制度なども存在しています。
中国のeスポーツ
中国はeスポーツ強豪国で、世界大会で活躍するチームを多数輩出しています。そもそも、ゲームはオンラインでプレイするものとうイメージが強く、eスポーツに対する忌避感などは少ないようです。
国を挙げてeスポーツを推進していることもあり、eスポーツプレイヤーの地位向上などが進んでいます。
韓国のeスポーツ
韓国はeスポーツ発祥の国とも言われており、最初にeスポーツと銘打ったのは韓国だという説が有力です。
国内でもさまざまなeスポーツ大会が開催されており、eスポーツ大国として世界から注目を集めています。
eスポーツはスポーツじゃないと言われる理由をまとめてみた
eスポーツについてスポーツの定義や論文、海外での扱いなど多角的に紹介してきました。
これらの内容をまとめると、eスポーツがスポーツじゃないと言われる理由は以下の3つに絞られます。
- 体を動かしていないからeスポーツはスポーツじゃない→スポーツは身体活動に限定されるものではない
- 精神を育む要素がないからeスポーツはスポーツじゃない→eスポーツは精神形成、スポーツマンシップの育成に大きく関与する
- 社会貢献できないからeスポーツはスポーツじゃない→多様性を受け入れられるスポーツとして、方法次第でさまざまな社会貢献に期待ができる
海外でeスポーツはスポーツとして認められている背景を見れば、いかに日本がeスポーツ後進国であるか分かることでしょう。
一方で、日本の技術は非常に高く日本製ゲームは世界で人気を独占している状態です。ゲーム大国である日本だからこそ、eスポーツへの理解が深まれば先進国・強豪国として世界と競うことができるようになるでしょう。
まずは、eスポーツに関する誤ったイメージを払拭し、スポーツとして認めて貰うことが重要視されています。
まとめ
eスポーツがスポーツじゃないと言われる現状ついて解説してきました。eスポーツはスポーツの定義から逸脱している点はなく、スポーツに当てはまります。しかし、誤ったイメージが払拭できていないことや、理解が広まっていないことでスポーツとして認めないという声も少なくありません。
まずは、eスポーツを知って貰うことこそが、業界やeスポーツプレイヤーへの大きな課題と言えるでしょう。
AFRAS(アフラス)では、プロeスポーツプレイヤーとのマンツーマン授業によりeスポーツを専門的に学ぶことができます。世界では既にスポーツと認められているeスポーツ。今後、世界で競いたいと考えているなら、専門的にeスポーツについて学んでみてはいかがでしょうか。