2024年に行われたパリオリンピックでは、eスポーツ種目の開催が期待されたもののIOCは時期尚早と判断し、正式種目として認められることはありませんでした。
世間には「eスポーツがこれだけ人気を博しているのにオリンピック種目に認められないの?」という声もありますが、そこにはさまざまな理由があります。
今回は、eスポーツが今後オリンピック種目として認められることがあるのか?認められない理由や今後の予想について詳しく解説します。
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スポーツ大会の種目として認められつつあるeスポーツ

eスポーツとは、electronic sports(エレクトロニックスポーツ)の略称で、電子機器を用いたコンピューターゲームの勝敗を競うものです。2000年頃に生まれたeスポーツの概念は、今や世界中に浸透し多くのプレイヤーやファンによって盛り上がりを見せています。
これまで「eスポーツはスポーツじゃない」などの否定的な意見も挙げられてきました。しかし、近年世界のスポーツ競技大会でもeスポーツを正式種目として認める動きが増えつつあります。
eスポーツ独自の国際大会は度々開催されてきたものの、サッカーや野球など一般的なスポーツと共に正式種目に認められたことは、eスポーツにおいて偉業とも言えます。
体を動かさなければスポーツではない、という意見を覆すためにも、eスポーツが世界の競技大会で認められることは重要な意味を持つと言えるでしょう。
eスポーツがスポーツ種目として認められた競技大会

これまで、eスポーツを正式種目として認めた競技大会には以下のものがあります。
アジア競技大会
アジア競技大会は、「アジアカップ」「アジア大会」などと呼ばれ、アジア圏最大のスポーツ競技会として1951年に第1回大会が開催されました。
アジア各国のスポーツ選手が競うなか、2018年大会からeスポーツが正式種目として認定され、大きな話題になったことをご存知でしょうか。2018年大会を皮切りに、2022年大会でもアジア競技大会ではeスポーツ種目が競われています。もちろん2026年大会も既に、正式種目として発表されており、今後もますます盛り上がっていくことが予想されています。
いきいき茨城ゆめ国体
eスポーツは国際化されていくばかりではなく、日本国内でも徐々に広がりを見せています。2019年に行われた「いきいき茨城ゆめ国体」では、日本で初めてスポーツ競技大会でeスポーツ種目が開催されました。
今回は正式種目ではなく文化プログラムとして行われましたが、国体史上初めて行われたeスポーツ種目として大きな注目を集めました。
オリンピックでeスポーツは正式種目に選ばれるのか?反対派・賛成派の意見

スポーツ競技会の最高峰と言えばオリンピックを連想する人が多数派でしょう。オリンピックは、世界各国から最高のアスリートが集結し競い合う4年に1度の祭典として、世界中から注目される競技大会です。
徐々にスポーツとしての地位を向上させつつあるeスポーツは、2024年時点ではオリンピック種目として認定されていません。ネット上でもeスポーツがオリンピック種目として認められるのか注目が集まっており、賛成派・反対派それぞれの意見が飛び交っています。
eスポーツ種目の追加賛成派の意見
オリンピックにおいてeスポーツ種目の追加を後押しする賛成派の意見には、以下の内容が多く見受けられました。
eスポーツはスポーツとして既に認められている
そもそも「eスポーツはスポーツなのか?」という点において、スポーツ競技会ではこれまで度々議論が交わされています。
eスポーツは、ただテレビの前でゲームをプレーしているだけではありません。実際は、高度なスキル、知略、コミュニケーション、瞬発力などを要し、息をする事も忘れる程の集中力を維持し続ける必要があります。世界で活躍するeスポーツプレイヤーは、アスリートと呼べる程に日々の鍛錬を重ねており、努力を重ねた結果、スポーツ競技会への躍進を果たしています。
賛成派からは「世界でこれだけ人気を博しているスポーツが、オリンピック種目に採用されないなんておかしい」という意見も多く聞かれます。
eスポーツは多様性のあるスポーツ
世界では、多様性を認め受け入れる風潮にあります。このような世論のなか、eスポーツはまさに多様性を認めるスポーツであるという意見が賛成派に多くみられました。
身体能力、性別、年齢、障害の有無ですら関係なく競う事のできるeスポーツは、まさにオリンピックに相応しい競技だと言う声も少なくありません。
eスポーツ種目の追加反対派の意見
eスポーツについて肯定的に捉える意見もあれば、オリンピック競技として反対する意見も聞かれます。続いては、オリンピックにおいてeスポーツ種目の追加を反対する意見についても解説していきます。
eスポーツはスポーツではない
これまで、スポーツは身体能力を競うものと考えらえてきました。足の速さ、力の強さ、表現力など、さまざまなスポーツのなかで自分自身の肉体を使って勝敗を競う事こそスポーツと考えられてきたとも言えるでしょう。
eスポーツでは、画面上のキャラクターなどを操作して勝敗を競います。キャラクターを操作しているのが人間であっても、現実では不可能な動きなどを二次元で競う事は、身体能力を競っているとは認められないという声が少なくありません。
eスポーツに不健康なイメージがある
スポーツにはさまざまな種目がありますが、どの競技にしても「スポーツをして不健康になってしまう」というイメージを持つものは思い当たらないでしょう。
しかし、eスポーツにおいてはゲームに依存してしまうゲーム障害などが心配されるなど、不健康なイメージとの切り離す事ができないのが現実です。
実際はイメージと異なり、プロeスポーツプレイヤーなどは心身の健康に気を使い健全にプレーをしていますが、そういった一面があまり知られていない事も反対派の意見を助長させている可能性が高いと言えます。
オリンピックでeスポーツ種目が採用されていない理由として考えられるポイント

賛成派、反対派それぞれの意見は多々ありますが、実際に2024年時点でeスポーツがオリンピック種目に採用されていない事にはいくつかの理由が考えられます。
IOCがeスポーツをスポーツとして認めるか悩んでいるから
IOC(国際オリンピック委員会)はeスポーツをスポーツとして認めるか否かを、慎重に議論しています。現状では「eスポーツがIOCにスポーツとして認めれていない」と捉えても差し支えないでしょう。
賛成派、反対派で物議をかもしているからこそ、オリンピック種目としての追加についてはIOCも慎重に検討している可能性が考えられます。
オリンピック種目としての需要が未知数だから
オリンピックの開催は慈善事業で行われている訳ではありません。さまざまな競技のなかでもバスケットボールやバレーボールのようにメジャーな種目は、観覧席の販売や放送権などによって収入が見込める一方、マイナー種目になると注目度が下がり採算がとれなくなってしまうケースも珍しくありません。
eスポーツは誕生してからの歴史が浅く、競技人口や注目度が未知数です。世界で人気があるとは言え、種目タイトルによっては一気にマイナージャンルとなりプレイヤーや観覧者も激減してしまう可能性が否めません。
競技としての人気や競技人口などが未知数であることも、eスポーツをオリンピック種目に決める上での大きなハードルとなるでしょう。
暴力表現・性的表現のあるタイトルが多いから
eスポーツには、暴力表現や性的表現のあるタイトルも少なくありません。世界で人気のFPS(一人称視点シューティングゲーム)ですら、平和の祭典と呼ばれるオリンピックには相応しくないという声も少なくありません。
もちろん、スポーツゲームやレーシングゲーム、パズルゲームなど、暴力表現や性的表現の一切ないタイトルもあります。しかし世界でメジャーとなりつつある人気タイトルに暴力表現や性的表現が用いられているため、IOCとしては慎重に検討せざるを得ないでしょう。
使用許諾や利権について複雑だから
eスポーツでは、必ず著作権に保護されているタイトルを使用します。そのため、大会などに利用する場合、著作権者への使用許諾などが必要となるでしょう。
オリンピックのような世界規模の大会で使用されるとなると、大きな契約になる上、選出されたタイトルにはさまざまな利益(認知度の上昇や売上増加)が予想されます。使用許諾や利権面で、eスポーツは大会運営側からすると複雑な種目です。
種目として追加する上での複雑性から選外となっている可能性も否定できません。
eスポーツがオリンピック種目に認定される可能性は?

現時点でeスポーツがオリンピック種目に選ばれていない理由について紹介してきましたが、今後についてはさまざまな予想が飛び交っています。
2020年の東京オリンピックで追加されたスケートボードや2024年のパリオリンピックで追加されたブレイキンのように、これまでオリンピックには追加されないであろうと言われてきた種目が認められた例が多々あります。
クリアすべき問題はあるものの、eスポーツにおいても望みが無い訳ではありません。
IOCは、オリンピックの新しい形としてデジタル体験に重きを置いた「Olympic Virtual Series(オリンピックバーチャルシリーズ)」を2021年に開催していますし、2023年には各国のゲーム会社などと連携して「オリンピックeスポーツシリーズ」を開催しています。
eスポーツワールドカップの開催国であるサウジアラビアのオリンピック委員会とIOCが提携し2025年に「第1回オリンピックeスポーツ大会」を開催することも決定済です。
さまざまな大会を経て、問題が解決されればオリンピックのeスポーツ種目追加もあり得ると考えられるでしょう。
eスポーツオリンピックを開催するメリット

eスポーツオリンピックを開催するメリットは主に以下の3つです。
- 若者のオリンピックの関心が高まる
- eスポーツの地位の向上につながる
- 多様性が高まる
若者のオリンピックへの関心が高まる
eスポーツオリンピックを開催するメリットは若者のオリンピックへの関心が高まる事です。若者はスポーツに関心がなく、オリンピックを見ない割合が高くなっています。eスポーツがオリンピックの競技に採用されることで、若者からの関心が高まることが予想されます。eスポーツをきっかけにオリンピックを見るようになり、他の種目への関心も高まっていくのです。
また、eスポーツに興味を持っている割合が低い年配者がeスポーツに関心をもってくれるきっかけになります。eスポーツとオリンピック両方の関心が深まるきっかけになるのが、eスポーツをオリンピックに採用するメリットの1つです。
eスポーツの地位の向上につながる
eスポーツをオリンピックに採用するメリットは、eスポーツ自体の向上につながることです。eスポーツの知名度が上がることで、スポンサーが増えたり、大会の開催頻度が多くなります。その結果、プロゲーマーが活動をしやすくなり、eスポーツ市場が拡大していきます。オリンピックにeスポーツが採用されることで、eスポーツの地位の向上につながるのです。
オリンピックの多様性が高まる
eスポーツをオリンピック種目に採用することで、オリンピックの多様性が高まります。eスポーツはオリンピックに採用されているスポーツとは異なり、身体能力以外の部分で競い合います。もちろん、多少の身体能力は影響していきますが、それよりもeスポーツへの理解度やプレイングスキルが大切です。そのため、オリンピック種目のスポーツをするには体が弱い人や、体が不自由な人でも、eスポーツであれば、オリンピックを目指せるようになります。オリンピック種目にeスポーツを採用することで、オリンピックの多様性が高まります。
eスポーツオリンピックを開催するデメリット

eスポーツオリンピックを開催するデメリットももちろんあります。メリットだけではなく、デメリットも知っておきましょう。
- 設備などに余分な費用がかかる
- ルールを統一・維持しにくい
- 年配者からの関心を得られにくい
設備などに余分な費用がかかる
eスポーツオリンピックを開催するデメリットは設備などに余分な費用がかかる点です。eスポーツは行うために、PCやモニターなど高額な設備が必要です。そのため、他の競技に比べて余分な費用が掛かってしまうのがデメリットと言えます。具体的には、eスポーツの大会で使用されるゲーミングPC、ゲーミングモニター、ゲーミングチェア、ゲーミングデスクなどをそろえるためには、数千万円以上かかってしまいます。eスポーツをオリンピックに採用するには、費用面でのデメリットがあるのです。
ルールを統一・維持しにくい
eスポーツをオリンピックに採用するデメリットは、ルールを統一・維持しにくいという事です。eスポーツはタイトルやバージョンによって、ルールや仕様が変わってしまいます。そのため、オリンピックの種目として採用するのはかなり難しいです。また、採用をしても開催年ごとにルールが変わるため、種目としての認知度は上がりにくいです。また、オリンピックに採用されている種目とは異なり、直感的にルールが分かりません。そのeスポーツタイトルを知っていないと、ルールが分からないのもデメリットの1つです。
年配者からの関心を得られにくい
eスポーツをオリンピックに採用するデメリットは、年配者からの関心を得られにくいという点です。年配者でeスポーツに興味を持っている人は少ないです。オリンピックの種目として採用をしても、若年層以外はほとんどが視聴しないことが予想されます。年配者からの関心を得られにくいため、eスポーツはオリンピックの種目として採用されにくいです。
eスポーツのオリンピックいつから行われる?

eスポーツのオリンピックは開催が決定しています。オリンピック内で行われるのではなく、eスポーツのオリンピックを開催される形で、新設されているのです。ここでは、eスポーツのオリンピックがいつから行われるのかを詳しくします。
2025年に開催される
eスポーツのオリンピックは2025年にサウジアラビアで開催されることが発表されています。具体的には2024年の7月に行われた、IOC総会(国際オリンピック委員会総会)でeスポーツのオリンピックの開催が発表されました。
The International Olympic Committee (IOC) today announced that it has partnered with the National Olympic Committee (NOC) of Saudi Arabia to host the inaugural Olympic Esports Games 2025 in the Kingdom of Saudi Arabia. This groundbreaking step follows the IOC’s recent announcement that the IOC Executive Board (EB) has established Olympic Esports Games. The proposal will be made to the IOC Session, which will be held on the eve of the Olympic Games Paris 2024.
12年間定期開催される
eスポーツのオリンピックは2025年から12年間にわたって定期的に開催されます。2025年の開催だけではなく、以降も開催されることが決定されているのです。2025年の開催を参考に、以降はより競技のレベルや内容の改善が期待されています。
The duration of the partnership between the IOC and the Saudi NOC will be 12 years, with Olympic Esports Games held regularly.
2024年にeスポーツワールドカップが開催されている
eスポーツワールドカップがサウジアラビアで開催されました。21種類のゲームタイトルで賞金は6000万ドル以上と超高額の大会でした。2023年まで開催されていた、games8という大会の後継の位置づけになっています。
サウジアラビアはeスポーツに力を入れており、eスポーツに関する地区の設営やeスポーツの大会の開催などが行われています。今後はeスポーツの大会がサウジアラビアで開催されることが増えていくと予想されます。
eスポーツのオリンピックの種目

ここでは、eスポーツのオリンピックの種目について詳しく解説していきます。
- 10種類の種目が行われる
- FPSなどは採用されない
10種類の種目が行われる
eスポーツのオリンピックの種目は下記の10種目です。(ただし、変更される可能性はあります。)
- 野球
- セーリング
- 自転車
- モータースポーツ
- チェス
- テニス
- テコンドー
- アーチェリー
- 射撃
- ダンス
これは2023年のオリンピックeスポーツファイナルズで行われた競技種目です。各種目を競えるゲームタイトルが使用されています。また、ゲームタイトルではなく、モーショントラッキングを使用して、仮想空間で競い合う種目もありました。
FPSなどは採用されない
eスポーツのオリンピックにFPSなどのシューティングゲームが採用されることはありません。オリンピックは平和の祭典であるため、銃を撃ったりするゲームタイトルが採用されることはないと明言されています。ただし、FORTINITEのようなゲーム内で、銃ではなく射的を競うような形で行われる場合はあります。
APEXやFORTINITEのようなシューティングゲームの世界大会を見るには、eスポーツオリンピックではなく、eスポーツワールドカップをチェックするようにしましょう。eスポーツワールドカップはゲームの世界大会であるため、大規模なeスポーツの世界大会として楽しめます。eスポーツ本来の競技性や臨場感を楽しみたい人はeスポーツワールドカップを見るようにしてください。
まとめ
eスポーツは歴史が浅く、ようやく世界で盛り上がりを見せてきた新興スポーツのひとつです。世界で最も有名なスポーツ競技会であるオリンピック種目になるには、超えるべきハードルが多くあるでしょう。
しかし、eスポーツが世界に与えている影響は決して無視できるレベルではありません。eスポーツの魅力が発信されることで、今後オリンピック種目に選ばれる可能性は高いのではないでしょうか。
eスポーツは年代や身体能力を問わず楽しめるスポーツです。未来のオリンピック選手を目指し、大人から子供まで多くの人が世界に挑んでいます。
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