eスポーツの世界的な大会を見ていると、多くの大会で「サウジアラビア」の国名を見かけることがあります。それは、開催地であったり、大規模なスポンサーであったり、はたまた優勝チームの所属国であったりします。
なぜ、世界のeスポーツシーンでサウジアラビアがこれほどまでに活躍しているのか、この記事ではサウジアラビアのeスポーツ事情を分かりやすく解説します。合わせて、2027年に開催が予定されているオリンピック・eスポーツ・ゲームズについても紹介しているので、ぜひ最後までチェックしてみてください。
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eスポーツ市場における先進国「サウジアラビア」
eスポーツの発展や経済効果などをリサーチしていると、必ず名前の出てくる諸外国がいくつかあります。1番目はアメリカ、世界で初めてのゲーム大会を開催するなどeスポーツの歴史も長く、APEX LEGENDSを開発したエレクロニックアーツ、FORTNITEを開発したEpic Games、League of Legendsを開発したRiot Gamesなど、eスポーツの主要なタイトルを開発したゲーム会社が数多くあります。
2番目は、日本と韓国です。日本は、ゲームハードの開発に定評がある他、世界のeスポーツタイトルとしても知られる「ストリートファイター」「鉄拳」などを輩出しています。韓国については、「eスポーツ」発祥の国とも言われており、世界に先駆けてプロeスポーツプレイヤーが職業として確立されたことでも有名です。
その他にもヨーロッパやアジアなど、eスポーツを語るうえで欠かせない国々は数多くありますが、現在のeスポーツ市場をここまで拡大させた立役者として知られるのがサウジアラビアです。
サウジアラビアってどんな国？
サウジアラビアは、中東・西アジアに位置する国で、絶対君主制国家であることが知られています。絶対君主制とは、議会や貴族、諸侯に比べて君主の権力が強く、絶対王政、絶対主義などと言い換えることもできるでしょう。
民主主義や資本主義など、時代の移り変わりによって多くの国が統治制度を変えていくなか、古くからの王政を維持し続ける数少ない国とも言えます。
サウジアラビアは石油資源が豊富で、国土の約8割を砂漠が占めるのにも関わらず経済は非常に発展しています。イスラム教の聖地メッカがある等、世界的な文化遺産も多くあるため、外国人観光客も多い国です。
次期指導者がeスポーツファンであることでも有名
現在、サウジアラビアではサウード家の絶対君主制が用いられています。第7国王であるサルマーン氏の時期後継者である皇太子ムハンマド氏は、大のeスポーツファンであることでも有名です。
2024年に世界初の試みとして行われたeスポーツ・ワールドカップでは、大会の立ち上げを発表するなど、eスポーツ業界にその存在感を大きくアピールしていました。その際にもムハンマド氏は「eスポーツ・ワールドカップは、サウジアラビアがゲームとeスポーツにとって最大の世界拠点になるための明白な次のステップだ」と表明しており、eスポーツファンである皇太子によるこれからのサウジアラビアの動向に世界中が注目しています。
サウジアラビアでeスポーツが盛んな理由
サウジアラビアでeスポーツが盛んな理由はいくつかあります。
国政としてeスポーツ支援を表明しているから
日本でもeスポーツ産業における経済効果は近年注目されており、新規参入する企業も増加傾向にあります。自治体の取り組みなどにもeスポーツを用いるなど、その注目度が高まっていることが伺えるでしょう。
しかし、サウジアラビアにおけるeスポーツは、日本と比べると位置づけが大きく異なります。現状、石油を主とした資源産業が経済の主軸になっているサウジアラビアですが、自然の資源はいつか枯渇する時がくるでしょう。そのため、石油産業以外にも国を支える産業が必要だと考えられています。
そこでサウジアラビアが目をつけたのがeスポーツでした。サウジアラビアの戦略的枠組みとして設けられた「サウジビジョン2030」では、石油産業への依存を減らし、産業を多様化する取り組みが発表されています。サウジビジョン2030の取り組みのひとつとして、国政としてeスポーツを支援する内容が記載されているのです。
中東でIT分野が急成長しているから
今や中東は第2のシリコンバレーと呼ばれ、イスラエルを中心にIT産業が盛り上がりを見せています。日本まで届いていないものの、中東で名作と呼ばれるゲームが数多く開発されており、世界でジワジワとその知名度を広げつつあることも理由のひとつでしょう。
世界で最も富裕層が多く住む地域とも呼ばれるアラブ首長国連邦からの支援もあり、中東のIT産業は今後ますます成長していくことが予想されます。
eスポーツ人気が高いから
サウジアラビアは人口における若年層の比率が高く、eスポーツという新興スポーツを受け入れやすいという側面も大きく影響しています。2024年に発表されたMENAゲーム市場環境分析レポートによると、サウジアラビアのゲーム市場規模は18億ドルと報告されており、2位のアラブ首長国連邦（5億ドル）に大きく差をつけています。
ゲーム人口も2,500万人と非常に多く、国民の若年層比率から見ても、今後ますますゲーム人口は増加していくことが予想されるでしょう。
サウジアラビアでは、eスポーツが国を挙げて主要産業と認められており、将来を有望視された国政として国および国民から支持されているのです。
世界最大規模のゲームとeスポーツの街「キディヤ・シティ」
サウジアラビアの首都リヤド近郊にある街、キディヤは総合エンターテイメント地区としての再開発がサウジビジョン2030で発表されています。中東の高度なIT技術を駆使してゲームとeスポーツの街を作ることが目的とされており、目標は世界最大の観光地にすることだそうです。
最新情報では、キディヤに日本を代表するアニメ「ドラゴンボール」のテーマパークが建設されることが分かっており、世界中のファンが注目しています。
500,000㎡以上の敷地のなかに、さまざまなエンターテイメント施設を建造することが発表されており、一般人に開放される住居やホテルなど、eスポーツ産業を要とした街が作られるようです。
また、サウジビジョン2030では、eスポーツ産業を要として地域を発展させる他、世界のeスポーツチーム拠点を誘致し支援することで、「eスポーツ強豪国」を作り出すことも目的に据えています。
サウジアラビアの有力eスポーツチーム
eスポーツを国策として支援し、ゲーム人口も多いことから、サウジアラビアのeスポーツは急速な成長を遂げています。徐々に世界大会で活躍しているチームや選手も増えてきました。
続いては、サウジアラビアの有力eスポーツチームを紹介します。
Team Falcons
史上初開催されたeスポーツ・ワールドカップで初代総合優勝に輝いたTeam Falcons（チーム ファルコンズ）。2017年に設立した同チームは、APEX LEGEDS、CS2、Dota2、VALORANTなど、世界の主要タイトルで好成績を残しており、各個人選手を見ても世界大会で名の知れた選手ばかり。まさに「アベンジャーズチーム」と言っても過言ではないでしょう。
特にAPEXタイトルで活躍する「インペリアルハル」ことフィリップ・ドーセン氏や「ゲンハーテン」ことノヤン・オズコセ氏、「ゼロ」ことリース・ペリー氏など、タイトル覇者とも呼ばれる選手達が多く在籍しており、現在も優秀な成績を残し続けています。
Twisted Minds
Twisted Minds（ツイステッド マインズ）は2021年に設立されたeスポーツチームですが、すでに世界大会の常連チームとして知られています。特にOVER WATCHでは圧倒的な強さを見せ、2023年のヨーロッパリーグでは年間を通して優勝しています。
史上初のeスポーオリンピックは2027年にサウジアラビアで開催予定
eスポーツが世界の競技シーンで注目を集めはじめ、アジア競技大会で正式種目として認められたことは世界に大きな衝撃を与えました。続いて、世界初となるワールドカップが開催され、ついに国際オリンピック委員会主催の元、「オリンピック・eスポーツ・ゲームズ」が開催されることが発表されています。
2024年の発表当時は、2025年に開催される予定でしたが、2025年2月の発表で2年延期し、2027年に開催される見通しであることが発表されました。
開催地はサウジアラビアの首都・リヤド。国際オリンピック委員会に加え、サウジアラビア・オリンピック・パラリンピック委員会が共同で行うことが発表されており、サウジアラビア皇太子であるムハンマド氏も協力関係であることが表明されています。
同大会では未だ、初回大会の競技タイトル等は発表されていませんが、2025年から「Road to Games」と称して世界各国に平等な出場機会を与えるための予選大会を行うことを検討しているようです。
eスポーツの歴史に名が残るであろうオリンピックeスポーツ・ゲームズへの挑戦権は、世界中のeスポーツプレイヤーの憧れであり、誰もが優勝トロフィーを目指して激戦を繰り広げることでしょう。
一方で「オリンピックの価値観に合致したゲーム」という種目選定についてeスポーツ業界では「CS」や「VALORANT」など、現在eスポーツ業界で主要タイトルとして採用されているタイトルが不採用になるのではないかと噂されるなど、今後も動向が注目されます。
今後も世界的な成長が見込めるeスポーツ業界
サウジアラビアのように、eスポーツの可能性に注目している国は他にも数多くあります。日本は、eスポーツの認知や導入にこそ世界から遅れをとったものの、近年恐るべきスピード感で市場が成長しており、今後も益々の繁栄が期待されるでしょう。
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